OpenAIがChatGPTの中で広告枠の販売を始めました。新しい広告プラットフォーム「OpenAI Ads」を通じて、オンライン小売店をはじめとする小規模事業者を先行導入に招き、突然の営業メールで直接売り込んでいます。広告主向けの公開サイトもすでに動いています。広告は、人々が何を買うか決めるためにChatGPTに相談する場面で表示されるよう設計されており、チャットボットとの会話から利用者とブランドがそれぞれ得るものも変わってきます。

「最後の手段」だった資金源から、動き出した広告事業へ

ChatGPTへの有料広告の掲載は、以前から「やるかどうか」ではなく「いつ始まるか」の問題に見えていました。Anthropicはスーパーボウルで流したCMで、回答にスポンサー付きのおすすめを紛れ込ませるチャットボットを皮肉り、Claudeを広告のない選択肢として打ち出しました。OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏は以前、広告はプラットフォームの資金をまかなう本当に最後の選択肢だと述べていました。

いまではOpenAI Adsによって、ブランドはChatGPTの会話の中に直接メッセージを届けられるようになり、第一弾の対象はECショップなどの小規模事業者です。Claudeが広告のなさを売りにする一方でChatGPTが広告を載せるようになったことで、チャットボットに広告が表示されるかどうかも、どれを使うか選ぶときに考える要素の一つになるかもしれません。

営業メールの中身

あるオンラインストアに届いた1通のメッセージから、OpenAIが広告主を集めるやり方が見えてきます。このストアには、OpenAIのアカウントマネージャーから、最初の広告主グループに加わらないかという誘いが届きました。メールは、テクノロジーに関心のある買い物客はまず自分の環境で抱えている問題から考え始め、それを解決するアクセサリーを選ぶのはその後になることが多いと指摘し、うまく合ったChatGPT広告ならストアがその選択により早く関われると訴えていました。最後には、今週か来週の初めに30分のミーティングを提案し、予約用のリンクを添えていました。

文面は硬く型どおりで、AIが下書きし、送信前に誰も確認しなかったかのように読める営業文でした。AI企業が、機械が書いたように見えるメールで広告主を勧誘しているのは、見逃しがたい皮肉です。

それでもこのストアは、仕組みが実際にどう動くのかを確かめるためにミーティングに応じるつもりです。Redditでの有料キャンペーンで成果を上げてきた経験があり、新しいデジタルチャネルにも関心を持ち続けています。マーケティングチームは、ChatGPT広告が費用に見合う成果を上げるかを見極める予定です。新しい広告プラットフォームを早めに試せば事業の役に立ち、そのプラットフォームが実際にどう機能するのかを直接知ることもできます。

営業の対象は小売にとどまりません。ある飲食店のオーナーにも、OpenAIの広告主向けサイトに誘導する同様のメールが届きました。

発送用の箱に囲まれたオンラインショップの店主が、カレンダーの面談枠を提案するメールを読んでいる

▲ オンラインストアに届いた広告の売り込み

広告主向けサイトはすでに公開

OpenAIの広告主向けポータルは誰でも見られる状態です。買い物客が製品を比べて購入を決めるまでの間に届く会話型広告を打ち出しており、事業者はそこで広告メニューを確認し、関心を登録できます。

キャッチコピーは「大切な瞬間に人々に届く」です。この言葉は、人がプレッシャーを感じていたり、最も無防備になっていたりするまさにその瞬間を狙う計画とも読めるため、落ち着かない気持ちになる読者もいるかもしれません。

サイトでは顧客の事例も紹介されています。Neweggでパフォーマンス広告を担当するマーケターは、利用者が購入予定のハードウェアを調べている会話の中に、このPCパーツ販売店が登場できる点をChatGPT広告の利点に挙げています。つまり、購入がまだ検討されている段階で、ブランドを候補リストに入れてもらう助けになるということです。このシステムは発売を待つ構想ではなく、すでに動いています。

OpenAI Adsについて、現時点でわかっていることは次のとおりです。

項目 わかっていること
営業の方法 事業者への直接のメール。あるストアには30分のデモを提案
最初の対象 オンラインストアや、飲食店などの小規模事業者
広告が表示される場所 利用者が製品を調べて選ぶChatGPTの会話の中
広告主の窓口 広告メニューの確認と関心の登録ができる公開サイト
既存の顧客 Newegg。ハードウェアの購入に関するチャットに登場
価格の目安 クリック単価が従来の広告ネットワークを目に見えて上回るとの報告

ChatGPTのクリックが割高な理由

ChatGPT広告のクリックは、従来の広告ネットワークでのクリックより目に見えて高くつくという報告があります。広告主はこれをクリック単価(CPC)、つまり広告が1回クリックされるたびに支払う金額として管理することが多くあります。この割高さは、次の三つの要因で説明できます。

  • OpenAIの財務事情:同社は莫大なペースで資金を使っており、自力で続けられる事業を築く必要があります。そのため、割高な価格設定は同社の状況に合っています。
  • 示された購入意図:チャットボットへの質問には、その人が何を買いたいのかがはっきり書かれていることが多く、広告は決断間近の人に届きます。
  • 途切れない注意:チャット中の人はながら見ではなく、入力し、読み、返信しているので、やり取りに集中し続けます。

オンライン動画にも似た構図があります。広告主は、録画済みのビデオ・オン・デマンド(VOD)よりも、生配信ではるかに高いCPM(広告表示1,000回あたりの価格)を支払います。1日に200万~400万回再生されるオンデマンド動画と、同時に5,000人が見ている生配信を比べると、表示1回あたりの収益は生配信のほうがずっと大きくなります。見ている人たちが集中し、参加しているからです。その代わりコストがかかり、密度の高いリアルタイムのコンテンツは制作費がはるかに高くなります。

形式 注意の向け方 広告価格
ビデオ・オン・デマンド 受け身 CPMは低め
生配信 集中し、参加する CPMはVODよりはるかに高い
ChatGPTの会話 能動的で、質問に購入意図が表れる CPCは従来の広告ネットワークを上回るとの報告

ソファでテレビをながら見する人と、ノートパソコンのチャットに集中して入力する人の対比

▲ 受け身の視聴と能動的な会話

利用者が気をつけたいこと

AIチャットボットには最初に登場したときから倫理面の警告がついて回ってきましたが、それでも人々はチャットの中の広告をクリックし、目にしたものを買う可能性が高そうです。利用者は当初こそ広告への移行に反発するかもしれませんが、チャットボットの会話に見られる深い関与と明確な意図を考えると、ChatGPT広告は大きな利益を生みそうです。

だからこそ、広告を完全に避けようとするより、自分なりの物差しを持つほうが役に立ちます。どんな製品でも、判断のシンプルな基準は、その販売価格でパッケージに書かれたとおりの働きをするかどうかです。問うべきは、あらゆる買い手に合うかではなく、その製品が自ら掲げた約束を果たすかどうかです。ごく控えめな期待さえ満たせない最安クラスのグラフィックスカードのように、それすらできない製品もあります。チャットの中の広告で出会った製品にも同じ基準を当てはめれば、売り文句に流されにくくなるかもしれません。

今すべきこと

ChatGPT広告は買い物の相談の真ん中に入ってきており、広告主はそこに出すために、従来の広告ネットワークより高いクリック単価を払っていると伝えられています。OpenAIはすでに広告主向けサイトを開設し、ショップや飲食店に直接売り込んでいます。

ChatGPTで購入前の下調べをするなら:

  1. 回答と広告を別物として読み、どちらがどちらかを意識します。
  2. 勧められた製品が、その価格で主張どおりの働きをするかを自分で確かめます。

事業を営んでいるなら:

  1. OpenAIの広告主向けサイトでチャット広告のメニューを確認し、売り込みが届いたらデモのミーティングで仕組みを確かめます。
  2. 人々が製品を探す瞬間と、質問から見える意図に合わせて広告を設計します。
  3. クリック単価が高いので、予算を決める前に、すでに成果が出ているチャネルと費用や成果を比べます。