Apple Watch Series 12は従来モデルに比べ、バックグラウンドでの心拍数測定の頻度が大幅に高まり、Apple Healthが睡眠スコアや準備度スコアに活用できるデータが増えます。Appleは周囲の発話を処理できる音声機能も計画しています。両者はウェアラブルAIの魅力と限界を示します。時計は個人の状態を振り返りやすくする一方、マイクは利用を選んでいない人にも影響を及ぼし得ます。
心拍数の記録はどう変わるか
AppleはSeries 12の裏面にある光学センサー群を、より大型で電力効率の高いLEDとフォトダイオードで刷新しました。このセンサー群は手首からの反射光を検出します。Appleによれば、この変更によってバッテリー駆動時間全体が短くなることはありません。バックグラウンドでの測定間隔には、大きな違いがあります。
| Watchの世代 | バックグラウンドでの心拍数測定間隔 |
|---|---|
| 旧世代のApple Watch | 5分ごと |
| Apple Watch Series 12 | 5秒ごと |
Appleは、新たなセンサー群がリング型端末とスマートウォッチの中で最も正確な心拍数トラッカーだとする白書を公開しています。これは心拍数測定の性能を比較した主張であり、時計の測定値を医療診断として扱ってよい根拠ではありません。個々の結果が診療上何を意味するかは、医療専門家が判断すべきです。
測定頻度の向上には、より広い製品戦略上の狙いもあります。画面のないフィットネスバンドの需要は過去1年間で122%増加し、Whoopはその市場の半分以上を占めています。Appleは画面のないバンドを投入する代わりに、一日を通して使える時計に、より頻繁な計測と新たな健康状態の要約を追加しました。
測定値から健康スコアへ
刷新されたApple Healthアプリは、AIを使って生体データの記録をスコアや傾向に変換します。OK ScoreはSleep Scoreとも表示され、睡眠を要約します。一方、Readiness Scoreは、装着者がその日を迎える準備がどの程度整っているかの推定値を示します。アプリ画面の例では、79のOK Scoreとともに、Awake、REM、Core、Deepという睡眠段階が表示されています。
Apple Healthには、Health Ageを算出し、その推定値を変動させる生活習慣と生体指標の要因を確認できるLongevityセクションも加わります。Metabolic Healthセクションでは、腎臓やコレステロールに関する結果を含む血液検査の情報を確認できます。これらの機能は変化に気づき、情報を整理する助けになるかもしれませんが、スコアはあくまでアプリによる解釈です。検査結果に関する疑問や健康上の判断については、医療専門家に相談すべきです。

▲ スマートフォン上の健康傾向
ウェアラブルAIが最も役立つのは、単に測定値を増やすことではなく、後から振り返れる形で示すことなのかもしれません。Readiness Scoreの価値は、単一の数値を健康状態に対する最終判定と捉えるのではなく、装着者が傾向を理解する助けになるかどうかにかかっています。
プライバシーの問題はマイクから始まる
AppleはAudio Intelligenceの機能として、Shazamを通じたMusic Recognition、Sound Recognition、Live Rewind、Siri Recapの4つを発表しました。後者の2つは、時計が扱う情報を個人の健康データ以外にも広げます。Live Rewindは、装着者がDigital Crownを2回タップすると、周囲で直前の15秒間に話された内容を文字に起こす設計です。Siri Recapはバックグラウンドで音声を拾い、会話の大まかな要約と構造化されたメモをSiriアプリに保存する設計です。
Appleは、この処理に関する保護策を説明しています。S11チップには、隔離されたハードウェア領域であるSecure Enclaveが搭載されています。Secure Enclaveは短時間だけ音声を保持するバッファを収め、その内容を継続的に上書きします。端末上のモデルが、そのバッファに警報音や発話などの音響パターンがないかを確認します。モデルが発話を検出した場合、または装着者がLive Rewindを起動した場合、暗号化された15秒間の音声断片がペアリング済みのiPhoneに送られ、音声がテキストに変換されます。Appleによれば、その後、生の音声は消去され、後からアクセスできる形では保存されず、暗号化されていないストリームとしてクラウドサーバーに送られることもありません。Siri Recapは話者を特定せず、声の生体認証情報も保存しません。
こうした処理上の境界は重要ですが、社会的な問題を解決するものではありません。バッファを継続的に処理するということは、時計のマイクが周囲の音を取り込むことでもあります。装着者のそばで話す人は、会話が文字起こしや要約になる可能性を知らないかもしれません。Siri Recapには、その人に知らせるための録音中を示すランプや通知音はありません。

▲ 共有空間の周囲音
安全な処理と同意の違いは、公共の場で特に重要です。スマートウォッチは誰かの手首に着けられたまま共有空間を移動し、周囲の人は音声機能が作動しているかどうかを容易には判断できません。AppleはAudio Intelligenceをハードウェアの発売時には搭載せず、後日、利用者が有効化を選べるApple Watch向けベータ版として導入する予定です。機能が利用可能になったとき、人々がどう反応するかはまだ分かりません。
今回の更新をどう捉えるか
Series 12は心拍数をより頻繁に測定し、睡眠や回復のパターンを振り返りやすくする可能性があるAIによる要約を提供します。Appleの精度に関する主張とプライバシー保護策は、それぞれの内容に即して理解する必要があります。どちらも健康スコアを医療上の助言に変えるものではなく、周囲の人が音声処理に同意する手段を与えるものでもありません。
現時点では、Apple Healthのスコアを傾向の確認に使い、医療に関する疑問は専門家に相談してください。音声機能のベータ版が利用可能になった際に試すなら、有効化の設定を確認し、適切な場合にはSiri Recapの利用を勤務時間中や特定の会議に限ってください。周囲の発話をメモに変える機能を使う前に、そばにいる人への影響も考慮する必要があります。