映像素材のカットは動画制作で最も時間のかかる工程であり、編集者を机に縛りつける工程でもあります。最近のあるワークフローは、この二つの問題を一度に解消しました。動画1本をまるごとClaude Codeのセッションと、Claude Code自身が書いた専用ツール群で編集し、Final Cut Proは一度も開かなかったのです。この構成では、人がテレビやスマートフォンで粗編集を確認して編集メモを声で伝え、素材の切り出し、クリップの照合、レンダリングはAIエージェントに任せます。より大きなポイントは、新しいAI編集アプリではありません。プログラミングとは関係のない仕事のためにClaude Codeで小さな個人用ソフトウェアを作り、それを手で操作する代わりに監督するという発想です。

編集がボトルネックになる理由

オンライン動画の制作では、編集がほかのどの工程よりも時間と労力を要します。しかもその労力には意味があり、編集にかける手間は動画の成果と密接に結びついています。ところが、その労力の大半は創造的な判断ではなく機械的な作業に費やされています。

  • 何時間分もの素材を見直し、使えるテイクを探す
  • カット位置を決め、タイムライン上にクリップを正確に並べる
  • 長年の制作で膨らんだBロール(メインの映像に差し込む補助映像)のアーカイブを探す

身体的な負担もあります。Final Cut Proのようなデスクトップ編集ソフトは非常に高機能ですが、長時間、机の前に座るか立つかしてキーボードとマウスを使い続けることになり、それが終わりのない人間工学上の闘いになります。AIの最大の強みがコンピューター作業から単調な作業を取り除くことだとすれば、動画編集はそれを生かすのにうってつけの分野に見えます。繰り返しの機械的な作業は手放し、人の時間はアイデアのために残すのです。

ツールを作るClaude Code

Claude Codeは、Anthropicのエージェント型コマンドラインツールです。エージェント型とは、質問に一つずつ答えるのではなく、複雑で多段階のタスクを自ら実行するという意味です。ローカルにインストールし、普段の言葉で話しかけて使います。Claude Codeはその依頼を、スクリプトの作成、ディレクトリの管理、プログラムに必要な依存関係(補助的なソフトウェア)のインストールといった、手元のマシン上の実作業に変えます。ターミナルで直接使うことも、Claude Codeが作ったカスタムWebアプリをスマートフォンで開いて間接的に使うこともできます。

これにより、プログラミング以外の仕事にとってソフトウェアが持つ意味が変わります。市販の編集ソフトに足りない機能が加わるのを待つ代わりに、ワークフローに欠けているツールそのものをClaude Codeに作らせればよいのです。今回の出発点は、市販のNLE(ノンリニア編集ソフト。Final Cut Proも属するタイムライン型ソフトのカテゴリー)を使わずに動画を制作できるカスタム編集スイートを求めるプロンプトでした。Claude Codeは、対話形式の指示と動画処理パイプラインをつなぐバックエンドのスクリプトとブラウザー画面を生成しました。

ソフトウェアエンジニアリングの経験は、このプロジェクトのシステム設計で一歩先んじる助けになりました。それでもこの手法は、深いコーディング経験がない人でもClaude Codeで同様のツールを作れるという見方に立っています。

自作編集スイートの中身

スイートはデスクトップPCが提供するローカルWebアプリとして動き、ブラウザーで開きます。台本の解析、音声カットの調整、話している人を映したメイン映像であるAロールのセリフのカットについて、それぞれ専用の画面があります。主なツールは次のとおりです。

ツール 役割
文字起こしエディター 話した内容を動画プレビューの横に表示し、文字を消すと対応するフレームが削除される
カットチューナー カットを順に並べ、波形のハンドルをドラッグして編集点と音声のクロスフェードを調整する
Bロールライブラリー すべてのクリップに、AIが書いた映像の説明、文字起こし、タイムスタンプ、カメラアングルを付けて索引化する
レビュー画面 粗編集をテレビやスマートフォンで再生し、タイムスタンプ付きの音声メモを記録する

同じ仕組みで、色補正、露出の調整、音量の平準化、LUT(カラーグレードを一度に適用するルックアップテーブル)の適用も元素材に直接行います。

カットチューナーは、この種のツールがいかに素早く生まれるかを示しています。作業机を離れてスマートフォンやテレビから編集点とクロスフェードを微調整するためのもので、Final Cut Proに長く望まれていた機能です。Claude Codeは、動作するバージョンを一度で作り上げました。

スイートは、プロ向けポストプロダクションソフトの機能をすべてまねようとはしていません。このワークフローに必要なものだけを備えています。この絞り込みこそが、特に数十年前には£1,000を超えた従来の編集ソフトと比べたときの軽さを生んでいます。

取り消し線の入った文字起こし、ハンドル付きの音声波形、説明付きクリップの一覧を表示したタブレット

▲ 自作の動画編集ツール群

AIのアシスタント編集者を指揮する

人の役割は、ソフトウェアを操作することから指揮することへと変わります。アシスタントを率いる編集者に近い立場です。人が創作の方向性を決め、AIが技術的な作業を実行します。典型的なレビューの流れは三つのステップです。

  1. レビュー画面で、粗編集をテレビやスマートフォンで再生します。
  2. 見ながらメモを話し、Whisperの音声認識でタイムスタンプ付きのテキストにします。
  3. Claude Codeにメモを読ませ、変更をプロジェクトのタイムラインに反映させます。

メモは会話調のままで構いません。あるBロールのクリップを話し手が映った別のショットに差し替える依頼、34秒の位置にワイヤーをはんだ付けするクローズアップを入れる依頼、ある場面を短くする依頼といった具合です。

Bロール選びも自動化されています。Claude Codeは文字起こしの一節とBロールライブラリーの映像説明を照らし合わせ、合うカットアウェイをタイムラインに差し込みます。たとえば、床に座った姿勢からしゃがみ、さらに立ち上がる動きをナレーションで説明した場面では、Claude Codeがまさにその動きを撮ったカメラのクリップを見つけ、必要な部分を切り出して、その言葉が話された位置に配置しました。

入力もキーボードとマウスから離れていきます。コマンドと進行状況は、目の前にターミナル画面を表示するスマートグラス、Bluetooth Low Energyで接続する手首装着型の4キーのマクロパッド、超小型の物理キーボード、スマートフォンを通じてやり取りします。スマートグラスとモバイル機器で動くソフトウェアも、このワークフローのために自作したものです。

自宅のデスクトップPCを個人サーバーに

この構成の中心は、自宅にあるデスクトップのワークステーションです。複数の機器を一つのプライベートネットワークにまとめるメッシュVPNサービスのTailscaleが、スマートフォン、スマートグラス、その他の携帯機器をインターネット経由で安全にこのデスクトップにつなぎます。複雑なポートフォワーディングは必要ありません。デスクトップは、誰もその前のモニターに向かわなくても仕事をこなす個人用のヘッドレスサーバーとなり、スマートフォンやウェアラブルディスプレイは、ローカルWebアプリをのぞく薄い窓の役割だけを担います。

ソフトウェア開発から動画のレンダリングまで、重い処理はデスクトップに任せたまま、人はもっと快適な場所から指揮を執れます。実際には、日の当たる南向きの暑い仕事部屋にこもる代わりに、庭のテラスや涼しい寝室のソファで、スマートグラスとテレビを使って作業していました。

この構成は、デスクトップとモバイルが別々のエコシステムに分かれ、その間を有料のクラウドサブスクリプションがつなぐという一般的なソフトウェアのモデルを逆転させるものでもあります。ここでは自宅のワークステーションがセルフホスト型のハブとなり、スマートフォンはそこから届く内容を表示するだけです。その結果は次のとおりです。

  • 外部のクラウド料金がかからない
  • 特定ベンダーのプラットフォームに縛られない
  • 独自仕様の編集ソフトのサブスクリプションが要らない
  • 元素材とプロジェクトのデータベースは利用者自身の管理下に残る

デスクトップPCが庭のスマートフォン、寝室のテレビ、スマートグラスとつながった家の断面図

▲ 個人編集サーバーとしての自宅PC

仕上げの手作業は5%からゼロへ

このワークフローも、いきなり手作業ゼロに到達したわけではありません。同じシステムで編集した以前の動画では、仕上げ作業の約5%をFinal Cut Proで行う必要がありました。今回はその割合がゼロになり、動画はすべてAIの実行によって完成しました。

AIで編集したその以前の動画は、成果も上々でした。YouTube Studioでは、24時間以内に直近10本のアップロードの中で1位になりました。公開後23時間39分の数値は次のとおりです。

指標 結果
再生回数 2万3,800回
サムネイルのクリック率 7.1%
平均視聴時間 5分29秒

かけた時間も目を引きます。カスタム編集パイプライン全体をClaude Codeで作るのにかかった時間は、長尺の動画1本を手作業で編集するより短かったのです。

この手法の限界

これはプロのポストプロダクションに代わるものではありません。ハイエンドなハリウッド作品や商業スタジオの仕事には今も専用のNLEが必要で、Final Cut Proは今も優れたソフトウェアです。この文脈での弱点は、能力不足ではなく机に縛られる設計にあります。この事例が示しているのは、個人のオンライン動画制作なら従来の編集ソフトを完全に省けるということであり、あらゆる編集作業でそれができるということではありません。

役割分担も重要です。AIは実行の機械的な部分を引き受けますが、動画の背後にある創作上の声、ストーリーテリング、個人的な経験は、それを作る本人のものとして本物であり続けなければなりません。

動画編集の先へ

自然言語でソフトウェアを監督するやり方は、動画にとどまらず、グラフィックデザインやCAD(コンピューター支援設計)といった分野にも広がる可能性があります。そのモデルでは、ディスプレイは主に作業の現状を示し、変更は会話で依頼します。キーボードショートカットを覚えたり、深い階層のメニューをたどったりする代わりに、やりたいことを言えばAIがその意図を操作に変換します。この流れが続けば、対話型でエージェント主導の自動化が、コンピューターで行う仕事の大半を変えるかもしれません。

自分のワークフローで試すには

中心となる教訓は、市販ソフトの対応を待つのをやめ、自分のボトルネックに合わせて絞り込んだツールを作ることです。始め方の一例は次のとおりです。

  1. ワークフローの中で最も繰り返しが多く、時間のかかる工程を一つ選びます。
  2. ローカルのリポジトリで、その工程だけを扱う小さなWebツールをClaude Codeに作らせ、使わない機能は省きます。
  3. 動画なら、文字を消すと対応する映像が削除される、文字起こしベースの粗編集から始めます。
  4. 画像もテキストも理解するマルチモーダルAIモデルでメディアライブラリーに索引を付け、すべてのクリップに検索できるテキストの要約を持たせます。
  5. メインのデスクトップとTailscaleを組み合わせ、ポートフォワーディングなしでどの機器からでもローカルのWebアプリと素材にアクセスします。
  6. 意図と実行を分けます。何を変えるべきかを伝え、タイムスタンプやプロジェクトファイルの調整はAIに任せます。

より大きな問いかけは、三つのことを合わせて見直すことです。机まわりの環境が体にどう影響しているか、AIエージェントを自分のツールのどこに組み込むか、そして手元にあるコンピューターがクラウドサービスの束に取って代われるかどうかです。