ChatGPTは、MicroStrategyが2025年に実施した資金調達で、通常とは異なる役割を果たしました。マイケル・セイラーが新たな金融商品の設計を詰めるのを支援したのです。その成果であるSTRKは、関連証券を含む約$150億の資金調達の一部となりました。この事例は、AIが文書作成や調査を超えて使われる一方、有望な仕組みを考案することと、実際の市場で機能すると証明することは別だと示しています。

課題は資金調達手段の限界

2025年初め、MicroStrategyは約$300億相当のビットコインを保有し、さらに購入するための資金を調達したいと考えていました。同社はすでに普通株式と転換社債に大きく依存しており、これらの手段を使い続ける余地は限られていました。同社のエグゼクティブ・チェアマンであるセイラーは、別の仕組みを探るため、OpenAIのChatGPTを活用しました。

照明の当たる机に、抽象的な格子と空白の棒が表示されたノートパソコンと、四角形や矢印を描いたノートが並ぶ

▲ 金融商品設計の制約条件

目標は明確でした。額面(証券に表示された金額)である$100の近辺で、価格が安定して推移する転換優先株式を設計することです。優先株式は配当条件が定められた株式の一種で、転換条項があれば、保有者は所定の条件でそれを転換できます。STRKはこうした特徴に、現金に近い商品を思わせる安定した値動きを組み合わせることを目指していました。

これは、資金調達の案を漠然と求める依頼ではありませんでした。既存の調達手段の限界、目標とする取引価格、投資家に提示できる条件のすべてが、検討すべき課題を形づくっていました。銀行関係者や証券法のアドバイザーは当初、そうした特徴の組み合わせに確立された先例がないとして、この構想に疑問を呈しました。

ChatGPTが設計を支援したもの

セイラーは、AIモデルの回答を改善するために指示を重ねる「反復的なプロンプト」を使い、提案する条件を詰めていきました。中心となる仕組みは、STRKの市場価格を$100近辺に保つことを目指し、毎月調整する変動配当率でした。仕組みと同じくらい重要だったのは、その目的です。配当の調整は、条件を紙の上で整えるだけでなく、証券が市場でどう取引されるかに対応するためのものでした。

MicroStrategyは、ビットコインを裏付けとするこの転換優先株式を新規公開(IPO)で市場に投入しました。IPOとは、その証券を初めて一般向けに販売することです。その後は、後続の証券販売を可能にする届出である一括登録を利用し、追加発行しました。この事例の調達額の内訳は次の通りです。

調達の内訳 金額
STRKの当初募集 $25億
その後のSTRK販売 $80億
関連証券 $40億
合計(概数) 約$150億

最初の2行を合わせたSTRKの調達額は$105億です。関連証券による$40億を加えると$145億となり、概数で約$150億の資金調達と表現されています。この区別は重要です。調達総額のすべてがSTRKによるものではなく、他社もAIを使えば同じ成果を得られると受け取るべきではありません。

設計のパートナーであり、最終判断者ではない

実践する際は、まず制約条件を定めます。セイラーは、漠然とした質問をするのではなく、関連する条件と取り得る選択肢を示す「状態空間」をAIに与えることを重視しました。この事例では、拡大が難しくなった資金調達手段、$100という価格目標、公開市場で取引される証券として機能する条件などが該当します。

この方法では、有用な回答のあり方も変わります。ChatGPTに新しい商品名を挙げさせるのではなく、提案された各条件が目標にどう役立つかを検討させ、ほかの要件と衝突する点を探れます。配当の仕組みをめぐるセイラーの反復的な検討は、その過程を示しています。資金調達上の課題に関するセイラーの知識が文脈を与え、モデルはその範囲で仕組みを探る手助けをしました。

同じくらい重要なのは、その限界です。AIが生成した提案は、法的な承認でも、投資家の需要を示す証拠でも、目標価格を維持できるという証明でもありません。金融・法務の専門家が提案された条件を精査する必要があり、市場への投入も別の取り組みです。STRKはAIが設計に貢献すると何が可能になるかを示していますが、プロンプトを入力するだけで証券を発行できることを示すものではありません。

なぜ金融以外にも広がり得るのか

消費者調査のデータによると、AIのサブスクリプションに料金を支払う世帯の割合は約2%です。この数字は利用拡大の余地が大きいことを示唆しますが、AIを活用した個々のアイデアが成功するかどうかは分かりません。この事例の特徴は、詳細な専門知識と、既存のひな型に答えがない問いを組み合わせた点にあります。

セイラーは、この可能性を技術の「S字カーブ」で捉えています。進歩が急速に進んだ後、やがて頭打ちになるという考え方です。セイラーは、1903年の初期の動力飛行から1969年の月面着陸までの急速な進歩と、その後50年間で商用ジェット機の効率は約15%しか向上しなかったという自身の評価を対比させています。一方、コンピューティングはより急勾配の進歩を続けているというのが、セイラーの見方です。

飛行機のシルエットの上で輝くS字曲線が水平に近づき、背後では細い曲線が上昇している

▲ 技術成長の異なる段階

この比較は、予測ではなく問いとして使うのが適切でしょう。仕事の流れのどの部分が定型化され、どこに未解決の課題が残っているのでしょうか。STRKの事例で得られた機会は、既存の文書をより速く作ることではありませんでした。厳しい制約の下で、異なる資金調達の仕組みを検討することでした。

次のAIプロジェクトに生かすには

  1. 本当の制約を明示する。 目標、すでに試した手法、実現可能な回答が満たすべき条件を特定します。
  2. アイデアだけでなく仕組みを求める。 提案された各要素が、どうやって望む結果を生むのかを検討します。
  3. 専門家とともに提案を検証する。 特に法的要件や市場の要件が重要な場合は、AIの出力を検証すべき設計案として扱います。
  4. 成果を正確に捉える。 AIが設計を支援したことと、その後に人が審査、発行、販売したことを区別します。

MicroStrategyの資金調達は、従来の選択肢が狭まる中で金融商品を検討するという、ChatGPTの高度な使い方を示しています。得られる教訓は、的確なプロンプトと専門分野の判断を組み合わせ、モデルが回答した後も検証を続けることです。