AI競争の焦点は、十分な計算能力を誰が確保できるか、そしてその能力を誰が役立つ製品に変えられるかという、連動した二つの問いに移りつつあります。AnthropicがAkamai Technologiesと結んだ$116億の契約は前者に対応します。Microsoftが個人向けと業務向けのCopilotを統合する決定は後者に対応します。どちらの動きもモデルの品質を無意味にするわけではありませんが、優れたモデルだけでは十分でないことを示唆しています。

Anthropic、数年先の計算能力を確保

AnthropicはAkamai Technologiesから計算能力を購入することで合意しました。契約期間は7年で、総額は$116億です。Akamaiはこの契約に関連して$55億の設備投資を計画しており、計算能力の提供開始は2027年後半を目標としています。この契約はAkamai史上最大規模で、特化型AI計算インフラ事業の大幅な拡大を意味します。

ここで重要なのは時期です。Anthropicによると、Claude向けの計算資源需要は前年比80倍に増えました。AIモデルを使う人や組織が増えるほど、開発元には推論のための計算能力が必要になります。推論とは、リクエストに対する回答を生成するための計算処理です。必要になるよりもかなり前に計算能力を確保することで、Anthropicは既存の資源では賄えない需要に対応しやすくなる可能性があります。

太い電源ケーブルと冷却ケーブルの下にあるサーバーラックに、GPUアクセラレーターモジュールが並んでいます。

▲ AI計算需要を支えるハードウェア

この契約では、Anthropicに株式取得権(ワラント)も付与されます。これはAkamaiの株式を取得できる権利です。この仕組みにより、顧客と供給元の関係は通常の計算サービス購入にとどまらないものになります。OpenAIもAMDとの計算能力に関する契約で、ワラントを組み込んだ仕組みを採用しています。こうした取り決めには、注視すべき問いがあります。AI開発企業が供給元の株式からも利益を得られる場合、契約額は独立した需要をどの程度明確に反映しているのでしょうか。契約の仕組みだけでは、この問いの答えは分かりません。

ほかの動きからも、計算能力を増強する圧力がうかがえます。イーロン・マスクは、メンフィスにあるxAIの施設Colossus 2に、NVIDIAのGB200とGB300のGPUを55万基導入したと述べました。GPUはグラフィックス・プロセッシング・ユニットの略で、AIの処理に使われる専用チップです。また、年末までにその数を倍増させることを目指すと述べています。別のAIデータセンター事業者は、新規株式公開(IPO)を計画する中、NVIDIAによる$10億の拠出確約を含む$33億6000万を調達しました。これらの数字は確約や計画を示すものであり、すべての施設が予定どおりに計算能力を提供したり、投資に見合う収益を上げたりする保証ではありません。

Microsoft、Copilotの役割を絞り込む

Microsoftは、これとは方向の異なる戦略的な一歩を踏み出しています。万能な個人向けデジタル・コンパニオンを開発する競争から距離を置き、個人向けと業務向けのCopilotを一つのソフトウェア環境に統合しています。改めて注力するのは、ExcelやPowerPointなどの生産性向上アプリで行う実務的な作業です。

明るい職場で、ぼかされたグラフと表が表示された大型モニターを使うオフィスワーカー。

▲ Copilotの業務タスク重視

この転換の中心にあるのは、MicrosoftがCopilotに何を担わせようとしているかです。すでに人々が業務用ソフトウェアで行っている仕事に、AIによる支援を結び付けようとしているようです。Metaの個人向けアシスタントMuseとの競争も、この判断の背景にあります。Museへの期待が高まる中、Metaの株価は9月に約30%上昇しました。ただし、Museが長期的にどれだけの収益を生むかは、まだ実証されていません。

Microsoftの選択によって、Copilotの中では個人向けAIと業務向けAIの区別が重要でなくなるかもしれません。利用者にとっての判断基準は、アシスタントが一般的な会話を続けられるかではなく、統合によって作業を完了しやすくなるかです。企業にとっては、ソフトウェアが社内データへのアクセスを適切に扱うかも重要になります。これは製品戦略の行き着く先についての見方であり、成果が約束されているわけではありません。

評価の焦点はモデルから提供の実態へ

二つの戦略は、同じ流れの中で異なる段階を担っています。Anthropicには、需要が増えてもClaudeを利用できる状態に保つための計算資源が必要です。Microsoftには、そうした資源を日々の作業で価値あるものにするCopilotが必要です。インフラへの支出だけでAI製品の有用性が証明されるわけではなく、有用な製品にも安定した計算能力が欠かせません。

AIの導入を計画する組織にとって、この違いから次の実務的な確認事項が見えてきます。

  • 計算能力が使える時期を確認する。 大型契約を結んでも、計算能力が今すぐ使えるわけではありません。AnthropicとAkamaiの契約では、稼働開始の目標は2027年後半です。
  • ツールを作業全体で評価する。 業務用ソフトウェアでは、もっともらしい回答を出すかだけでなく、一連の作業を終える助けになるかを見ます。
  • データと操作の管理を確認する。 AIシステムが業務プロセスの中で働く場合、権限、データセキュリティー、実行を許す操作の明確な制限が重要です。

次に注目すべき点

Anthropicの契約は、AI開発企業が計算能力を確保するために、どれほど先を見越して契約を結ぶ可能性があるかを示しています。MicrosoftによるCopilotの方針転換は、もう一方の課題を示します。使い慣れたアプリの中で、AIに確実に仕事をこなさせることです。こうした動きを見極めるには、約束された計算能力がいつ利用可能になるか、統合されたAIツールが組織の統制を守りながら実際の作業を改善するかを追う必要があります。その結果こそが、契約規模や製品の位置付け以上に多くを物語るはずです。